研究Research
生命医科学コース血管分子生物学研究分野ホームページ
スタッフ
- 教 授:山本 靖彦(生化学、病態医科学、内分泌代謝学)
- 助 教:棟居 聖一(生化学、生物工学、分子生物学)
- 助 教:原島 愛(生化学、細胞生物学、薬物治療学)
- 助 教:木村 久美(生化学、代謝学、実験動物学)
主な研究テーマ
- グリケーションを基軸とした老化の基礎研究から応用研究への展開
- パターン認識受容体RAGEの生理作用と病態形成に与える影響の研究
- 愛情ホルモン・オキシトシンによる社会性行動と炎症制御作用の分子基盤の解明
研究の概要
グリケーションと老化、そして加齢関連疾患
私たちの研究室では、グリケーション(糖化反応)に着目した老化研究を行っています。老化は、生体における「錆びや腐食」のようなものと捉えられます。グリケーションは、そのような老化に関わる反応の代表で生体内にある分子は生命活動に伴って非酵素的なグリケーションを受け、生きている限りこれを避けて通れません。例えば糖尿病のような慢性的な高血糖状態では、生体内のあらゆるところでグリケーションが亢進し、その最終産物であるAGEs(advanced glycation end-products)が蓄積することで、動脈硬化や糖尿病血管合併症の発症、そして発がんにも繋がり、平均寿命が短くなるのではないかと考えられています。
私たちの研究室では、健康寿命の延伸に向け、グリケーションを基軸とした国内・国際共同研究を推進し、診断・創薬などの応用研究も行っています。
パターン認識受容体RAGE
グリケーションで生じるAGEsの受容体がRAGE(receptor for AGEs)です。RAGEは、現在では、AGEs以外の様々なリガンドも認識し、多彩な生物学的機能を有するパターン認識受容体の一員であると理解されています。自然免疫においてその役割を果たしたり、炎症の発症や加齢関連疾患(動脈硬化,がん,アルツハイマー病、肺線維症など)の発症進展に原因的に関わることが知られています。現在、RAGEを標的とした応用研究も行っています。
オキシトシンの社会性行動と抗炎症作用
オキシトシンは、元来は出産時の子宮収縮や乳汁分泌という重要な役目が知られていました。最近では、母性や人間関係の形成などの社会性行動に関係しているといわれています。私たちの研究室では、子どものこころの発達研究センターと共同で、血液脳関門を構成する血管内皮細胞に存在するRAGEがオキシトシンの脳内移行に必要な分子であることを発見しました。これらの成果は、自閉症スペクトラム障害などの精神疾患や、育児放棄や虐待など今日の社会問題を解決する一助になる可能性も秘めており、さらに研究を進めています。
それと同時に、これまでオキシトシンには免疫調整作用があることを新たに発見し、研究を進めています。オキシトシンの炎症免疫抑制効果とその分子機序の解明によって、様々な自己免疫疾患や炎症性疾患の治療に応用することが可能と考えています。
グリケーションとAGEs (advanced glycation end-products)の形成、そして、その受容体RAGE (receptor for AGEs)。RAGEは愛情ホルモンであるオキシトシンの脳内輸送に関わる重要なキー分子でもある。