金沢大学 医薬保健学域 医薬科学類

研究Research

生命医科学コース血管分子生理学研究分野ホームページ

スタッフ

  • 教 授:内藤 尚道(血管生物医学、幹細胞医学、腫瘍医学)
  • 准教授:吉岡 和晃(分子生理学、病態生理学、血管生物学)

主な研究テーマ

  • 血管内皮細胞の多様性と臓器特異性の獲得機構
  • 疾患病態における血管新生と血管恒常性維持に関わる分子機構の解明
  • 肺胞幹細胞の分化制御と肺組織構築機構

研究の概要

 血管は高度に階層化したネットワークを構築し、血液を全身に送り、酸素や栄養分を供給し老廃物を受け取ることで、組織の恒常性を維持しています。血管の内腔を覆う血管内皮細胞は寿命が非常に長く安定した細胞として知られていますが、創傷治癒の過程や、癌や慢性炎症などの病態では、活発に細胞分裂を起こし、血管新生と呼ばれる過程により、既存の血管から新たな血管を構築することが知られています。これまで血管内皮細胞は、全ての細胞が同じ能力を持ち、均一であると考えられてきましたが、実際には血管内皮細胞は様々な多様性を示し、また臓器ごとに非常に多彩な形態と機能を呈することがわかっています。私達の研究室では、血管内皮細胞をはじめ、壁細胞や平滑筋細胞など、血管を構築する細胞の多様性と臓器特異性の解明を通じて、血管がどのように構築され、どのようにしたら破壊できるか研究に取り組んでいます。特に「幹細胞性」をもつ特殊な血管内皮細胞による血管構築の研究に関して、世界トップレベルの成果をあげています(模式図)。
 また、血管は血液を通す単なる「管」ではなく、周囲の細胞と積極的に相互作用することが、血管自体はもちろん組織全体が正常に機能するために重要であることが明らかになってきています。私達は血管の恒常性維持に関わる複数の遺伝子を同定し解析しています。特に肝臓や腸管粘膜、肺の血管が、他の組織常在細胞と相互作用する分子機序を解明することで、臓器の維持機構や形態形成機構、さらには疾患の病態生理の解明に取り組んでいます。
 また、細胞膜イノシトールリン脂質による細胞内小胞機能の制御機構を研究する過程で、脂質キナーゼおよび脂質ホスファターゼ・ミオチュブラリン関連タンパク質(MTMR)が協調的に細胞内クリアランスを制御する新しい調節分子であり、その欠損が細胞内の不要物質、老廃物の分解除去(クリアランス)を障害することを明らかにしてきました。興味深いことに、脂質ホスファターゼの一種であるMTMR4の遺伝子欠損マウスは肺の機能障害により出生後早期に死亡すること、また2型肺胞上皮細胞(AECII)特異的MTMR4-KOマウスは全身KOマウスと同様の表現型を呈することを見出した。現在、組織幹細胞としてのACEIIに焦点を絞り、(1)AECIIにおいてMTMR4 がAECIIの増殖・分化を制御する機構、(2)AECIIがMTMR4を介して間質細胞の過剰増殖を抑制し肺組織の正常な構築に関与する機構、の2点を解明することを目指しています。

研究紹介動画