研究Research
創薬科学コース天然分子薬化学研究室ホームページ
スタッフ
- 准教授:後藤(中川)享子(メディシナルケミストリー、天然物化学、有機化学、ケミカルバイオロジー)
- 助 教:齋藤 洋平(ケミカルバイオロジー、有機化学、細胞生物学)
主な研究テーマ
- 難治性がん種選択型天然分子の探索、構造活性相関、合成を基盤とした創薬への展開
- 特殊生物活性天然分子の化学プローブ化と基礎生物学への適応
- 希少植物含有天然分子の化学的保存に向けた天然物の単離解析
研究の概要
自然界に存在する動植物や微生物は、自身の生命維持には直接必要ではない多彩な有機化合物を体内で作り出しています。これを二次代謝産物あるいは天然物と言います。酵素反応により作り出される天然物の化学構造は非常に多様性に富んでおり、潜在的にタンパク質に対して親和性を有しています。私たちが使用している医薬品の約半数は、そのような自然界から見出された天然物に由来する化合物なのです。
私達の研究室では、”天然分子”の医薬品としての潜在能力を引き出す”薬化(科)学”研究を行っています。
1)難治性がん、多剤耐性がんに挑む
天然分子を基盤に,有機合成化学や医薬品化学と生物学的要素をコラボレーションさせた研究を行っています。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)などの難治性がん、ならびにがん化学療法の大きな障壁となる多剤耐性がんに選択性の高い天然分子からの創薬と作用機序の解明に挑戦しています。
当研究室ではこれまでに、アビエタン、ノルエレモフィラン、カルコン、フラボンなどの骨格を有する天然分子誘導体ががん種選択的に有効性を示すことを独自に見出しています。これら化合物の薬化学的解析のため、合成ルート開発を通した構造活性相関研究を展開し、前臨床試験に供するリード化合物の創成を行っています。
2)特殊生物活性天然分子を利用したケミカルバイオロジー研究
特定のがんに特異的に有効性を示す天然分子の発見を基盤とした化学プローブの開発に挑戦しています。がん種選択性を示す天然分子は副作用のより少ない次世代の精密がん治療への応用が期待できます。さらに、これらを化学プローブ化することにより、がん基礎生物学と診断への貢献を目指しています。
3)熱帯林産植物に含まれる貴重天然分子の化学的保存に挑む
消滅の危機に曝されている熱帯林産植物の多くは未だ植物化学的な精査が行われておらず、医薬品候補となる未知の天然物が数多く存在すると信じられています。そのような熱帯林産植物に焦点をあて、新規骨格ならびに上記1)、2)のような特異的な生物活性を有する天然分子の探索研究を行っています。発見された新規天然物とその生物活性は科学的なデータとして、将来の希少疾病や難病を含む創薬に活用できるよう保存します。