研究Research
創薬科学コース分子薬物治療学研究室ホームページ
スタッフ
- 教 授:加藤 将夫(薬物動態学、薬物治療学)
- 准教授:増尾 友佑(薬物治療学、薬物動態学)
- 助 教:石本 尚大(神経薬理学、薬物治療学)
主な研究テーマ
- 薬物速度論モデルに基づく個体レベルと分子レベルの統合に関する研究
- 薬物の細胞膜透過調節機構による栄養物と異物の分子識別に関する研究
- 食品由来成分の体内動態と病態予防・治療に関する研究
研究の概要
私たちの研究室では、薬を使った病気の治療(薬物治療)を適切に行うための研究を行っています。まず、病気の進行や、薬の効果・副作用などによって変化する体内の物質をメタボロミクスという解析技術を使って探索します(図の①〜②)。この物質は、病気の進行や薬の効果・副作用と関係があると考えられますので、薬物治療や健康のバロメータ(バイオマーカー)になるかもしれません。そこで、その物質や薬自身の体内動態、病気における変化を解析し、病気や薬の作用とどのように関係するか、そのメカニズムを解明します(図②)。こうすることで、病気がどのように悪化するか、あるいは薬がどのような時に作用が減弱したり副作用が増えたりするかを科学的に理解することができます。メカニズムの解明には、主に細胞や動物を使う一方、ヒト(健常人や患者)の検体を使うこともあります。ただし、ヒトの検体は血液など、からだのごく一部ですので、得られる情報は限られます。そこで、細胞や動物とヒトとの定量的な違いを埋めるために、体内動態や効果・副作用を記述する数理モデルを用います(図②)。例として、抗がん薬のように副作用の強く出る薬の体内動態や副作用を解明し、バイオマーカーを見つけることで、安全な治療に貢献することを目指した研究をしています。また、健康維持に働く物質をメタボロミクスで見つけ、病気の予防や治療に応用する研究も行っています。脳の海馬に存在し、自身が増殖しながら神経細胞(ニューロン)に分化する性質を持つ神経幹細胞に作用する食物由来物質エルゴチオネインや核酸などの研究を精力的に進めています。病気に関係する膜輸送体(トランスポーター)と呼ばれるタンパク質に着目する点に特色があります。これらの研究を通して、医薬品や健康食品等の開発研究に発展させています(図②〜③)。現在、主に4つの研究テーマが動いています。(1)薬物治療を定量的に評価するバイオマーカーの探索(膜輸送体等のバイオマーカーを見つけ、薬の効き方を解明します)。(2)抗がん薬を使った治療の最適化(がん患者での体内動態を制御する因子を解明し、より良い投与方法を探します)。(3)食品由来成分の探索と病気の予防・治療(健康維持だけでなく、病気の治療の標的分子を解明します)。(4)生理活性タンパク質のアンメット疾患への応用(組換えタンパク質や遺伝子の医薬品への応用を目指します)。